11.異常値をきたす他の要因です

1,5-AG測定値に影響する病態,薬剤


異常低値  異常高値
腎性糖尿  一部の経管栄養剤
(エレンタールなど) 
Oxyhyperglycemia
(胃切後など) 
・人参養栄湯
・加味帰脾湯
(含有されるオンジによる)
妊娠(30週以降)  
慢性腎不全
(クレアチニン 2.0 mg/dL 以上)
 
長期間のIVH  
肝硬変  
アカルボース  
SGLT2阻害薬  

  1,5-AGは腎糸球体から排泄された後、正常人ではほぼ100%尿細管より再吸収されます。

 腎糸球体自体は1,5-AGの代謝に直接関与しないので、腎糸球体障害が主体の急性腎不全(Nephron 73, 707 1996)やネフローゼ単独では血清1,5-AG値は影響を受けません。
 同様に、クレアチニン2.0mg/dl未満ないし腎症3期までなら検査値に影響はありません。
(Diabetes Care 35, 281,2012, Clin Sci 88, 203,1995)

 1,5-AGは尿細管障害の影響を受けますが、進行した腎障害以外の腎臓病の影響はあまりありません。障害される尿細管の部位が1,5-AGの再吸収部位と異なるためと思われます。
(Ann Clin Biochem 38, 749,1999 , Diabetes Care 22, 863,1999 )


 SGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進するため、1,5-AGは血糖コントロール指標にならなくなります。 しかし、1,5-AGは本来尿糖量の指標です。1,5-AG値×1日平均尿糖量(g)=16(5章参照)の関係があります。 したがって、特に血糖近正常域でのSGLT2阻害薬の使用量の調節や、摂食量を推定する際の参考になると思われます。 HbA1cが低下しているのに1,5-AGが全く上昇しない例では、摂食の増加により尿糖が増えていることが予想されます。

 漢方薬の一部でオンジ(遠志)を含むものを長期服用していると1,5-AGは高値となります。オンジの中に1,5-AGが含まれているからです。化学物質としての1,5-AGは約100年前、オンジを大量に含む牧草中に発見されました。



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